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長さ5m、幅90cmの老人ホーム玄関脇の窓に光や空をテーマにした白やクリアを基調としたステンドグラスを依頼されたのは、今年の初めでした。すぐにデザインを描いて欲しいと言われ、光、虹、風の流れを主体に、その中心に雪を抱いた八ヶ岳を描きました。(日本の山、名所シリーズをガラス彫刻で依頼されたその関連もありました)

強度を出すため分割や縦補強も考えましたが、おおらかなデザインの特徴を殺さぬよう、クラーチさんのロゴマーク以外は縦線を排除しました。真鍮入りの補強ケイムを要所要所に使って組んで行きましたが、全体の曲線の流れを出すのが想像以上に大変な作業でした。普段の立ち姿勢では全体を見渡すことができないため、机の上に登り修正部分を確かめ、滑らかな曲線になるよう、夜中まで組み直すことが何度もありました。また以前音楽堂ビルの大きなステンドを制作した時の経験を生かし、パテの代わりにコーキングで補強を強化しました。マスキングを貼り、ケイムの隙間にシリコンを流し、乾いた後きれいにクリーニングするコーキング作業も大変時間や労力がかかりましたが、パテと比べ何倍も強度が増したと思います。周囲は15ミリの真鍮ケイムを使いましたが、製作中のすべてが大きさや重さ、強度が重要課題となり、裏返す時、運ぶ時など、特に慎重には慎重を記し作業を行ってゆきました。

時期を同じくして大手ステンドグラスメーカー2社がガラスの生産を中止してしまったため、使用する予定のガラスが入手困難となり、あちこち奔走し、部分的に変更したりしながら何とかガラスを入手することができました。流れのあるバロック・クリアはどこも買い占められていた為、入手可能だったイリディセント・ガラス(虹色に光るガラス)をバックに使いました。少し不安もありましたが、かえって華やかな雰囲気になり、結果的に良い作品になったなと満足しています。

撮影・記述 岡部和子     KIMG4641 KIMG4558